第1巻〜第4巻:新人賞受賞
木蓮編集部に届いた、作者の連絡先さえない新人賞応募作。鮎喰 響という作者の名前しか分からない『お伽の庭』は、紛れもない傑作だった。作者が分からないことには出版できない。編集者の花井 ふみはどうにかこれを世に出そうと響を探して奔走する。
作者の響は高校に入学したばかりの15歳の少女だった。どこまでも自分の考え、やり方を貫き周りと衝突してしまう。『お伽の庭』はそんな自分の価値観を確かめるために書いた作品であったが、彼女には並外れた感性と才能があった。一時は要項不備のためお蔵入りしかけるが、高名な小説家を父に持つ文芸部の2年生、祖父江 凛夏を通じて響と花井は接触し、『お伽の庭』は木蓮新人賞を受賞した。
響は小説を通じ様々な人々と出会うが、その姿勢は変わらない。無難な作品しか書けなくなった芥川賞作家に正面からつまらないと言い放ち、喧嘩を売ってきた新人賞同期受賞者を授賞式の壇上で殴打する。騒動を起こしながらも、その圧倒的な才能で人々の生き方を変えていく。
第4巻〜第6巻:芥川賞・直木賞同時受賞
凛夏は二世・現役女子高生作家として小説家デビューして『四季降る塔』を発表し、一躍有名人になる。しかし響は正直にその作品をつまらないと言い喧嘩になってしまう。凛夏は芥川賞候補作の発表で響に勝負を持ちかけるが、響の『お伽の庭』が芥川賞・直木賞に史上初・最年少ダブルノミネートされる一方、凛夏は候補に挙がらなかった。嫉妬が爆発し凛夏は思わず友達でないと響に暴言を吐いてしまうが、響はそれを本心じゃないと理解していて、2人は仲直りする。
史上最年少・史上初のダブルノミネートし、さらに同時受賞まで成し遂げてしまった響の周囲は騒がしくなるが、響は賞に興味を示さず一切の取材を拒否し、ここでも彼女は自身の姿勢を変えない。しつこく付け回す週刊誌の記者のカメラを壊して自宅に乗り込んで脅迫し、フードで顔を隠して出席した受賞会見では花井に暴言を吐いた記者にマイクを投げつけ、フードを引き剥がそうとした記者を蹴り飛ばした挙句会見場の窓から逃走してしまう。その帰りに芥川賞受賞を4度目のノミネートで逃し、絶望で踏切自殺しようとした山本 春平と出会う。駄作しか書けないから自殺するという山本に、響は自殺させないために線路内に留まり、駅員が押した非常停止ボタンで寸前の所で電車は止まる。「小説家なら傑作1本書いてから死になさい」「私は死なないわよ。まだ傑作を書いた覚えはない」。彼女の言葉に押され、山本は生きて小説家を続ける決意をした。
第6巻〜第9巻:テレビ局襲撃
4月を迎え、響は2年生になった。『お伽の庭』は発売から2ヶ月で170万部刷られ社会現象とまでなったが、響がその作者であることを知る者は凛夏、そして文芸部新入部員の柊 咲希らごく一部であり、世間で「響」の素性は謎のままだった。一方響の性格・行動は変わらず、喧嘩を売ってきた新入部員を半殺しにするなど彼女らしく過ごしていた。
以前響はラノベを執筆している文芸部員関口 花代子に、アドバイスのつもりでヴァンパイアをテーマにした小説『眠る月』を執筆していた。この小説を花代子は気に入り、出来心でラノベ大手のNF文庫新人賞に無断で投稿してしまう。『漆黒のヴァンパイアと眠る月』と花代子によって改題されたこの小説は大賞を受賞し、アニメ化まで決まって騒動になってしまった。盗作であるため取り下げと賞の辞退を申し出る響と花代子だったが、アニメ化のプロデューサー津久井は文体から『お伽の庭』の作者「響」だと見抜き、そのキャラに惚れ込んで響をアイドル化しアニメをゴールデン枠に持ってくることを企てる。彼女の性格を見越して無許可でドキュメンタリー番組を作成する津久井であったが、それを知った響は番組を潰すと宣言。収録現場にテレビ局の社長を人質にとって乗り込み、収録を中止しなければ社長の指を折ると脅迫する。無関係な社長を傷つけず、津久井を欺くために本当に自身の指を折り、ついに番組を中止に追い込んだのであった。
第9巻:小説家になる方法
表舞台に出ないところで騒動を起こしながらも、『漆黒のヴァンパイアと眠る月』は「響」の2作目として出版され、初版だけでも30万部になった。凛夏も2作目『竜と冒険』を発表。純粋に自身の描きたいものを見つめ直した作品は前作よりも好評だったが、またしても芥川賞ノミネートはならなかった。「自力で手に入れた肩書きが欲しかった」と呟く凛夏を、「友達の響ちゃん大絶賛じゃ駄目?」と響は悪気なく慰めた。親友の言葉に、凛夏は素直に感謝することができた。
『お伽の庭』の芥川賞・直木賞同時受賞から1年が過ぎた。咲希は偶然書店で山本と出会い、小説家になる方法を尋ねた。山本にも分からず答えられなかったが、その後5度目のノミネートでついに山本は芥川賞を受賞した。「何年も努力して書き続け、ただ小説のことだけ考えて、そうやって俺は芥川をとれた」。才能に恵まれなかった者として、山本なりの小説家になる方法だった。文学部全員で応募した高校文芸コンクールに、響は2時間で書き上げた短編小説で最優秀賞を受賞した。期日ギリギリまで粘って描き上げ、自信を持って臨んだ咲希は入賞もできなかった。残酷なまでの才能の差。会見で小説家になる方法を答える山本に、咲希は涙が溢れた。
第9巻〜:政治家との対決
生きろ